The Boogie Man Song

私は日頃あまり本屋に行く習慣がないせいか、本屋にたまに行くとえらく往生してしまう。

たとえば新聞の広告とかで「あ、これ面白そうだな」と著者名と題名、出版社を覚えて本屋に行っても、大変に苦労させられる。これは多分に私の人間的欠陥に因るところが大きいかとは思うのだが、それにしても大きい本屋になればなるほど、目当ての本を見つけられないのはどういうことなのだろうか。

文庫ならば、大体発見はできる。しかしハードカヴァーの本になると、果たしてその本がどのジャンルに入るのか、文芸だと思っていたら美術書、果てはサブカルチャー、などというジャンルに入れられたりしていて脱力、ということが多々ある。

新刊コーナー、みたいに平台に積まれていれば発見もしやすい。しかし棚に入っているのを見つけるのは私にはなかなか難しい。

このように本屋で難儀する、とかいうのはなかなか恥ずかしくておおっぴらには言えないのだけれどもこの苦しい胸の内を吐き出してしまえば少しは楽になるかな、と思いこうして筆を執った次第です、はい。

そんな私であるが、本を読むのは好きである。さてじゃあその本はどこから・・・?と当然ながら思われるかとは思うが、大体古本である。しかも古本屋でではなく、中古レコードと古本を扱う謎の店で大体購入している。店主が大体私の好きそうなのを分かってくれているようなので私のために本が取っておいてあり、上記のような苦労もすることなく(そもそも店が小さい)、比較的安価で読みたい本が入手できて非常に楽である。

とか書いてきて思ったが、それって単に自分、怠惰なだけなんじゃないのか、とか今思ったりした。これはいかん。これではボケてしまう。脳年齢を若くするためにも(はかったことなぞないが)、もっと積極的に本屋に足を運び、棚の配置やその傾向をしっかりと各店ごとに覚えておかなければいけないのではないか、自分。

まあ、何もそこまですることはないか。しかしレコード屋ではそんな苦労したことないのになあ。苦労すると言えばレコードフェアのときくらいだろうか。しかしそれとて、まず「ニューウェーヴ」という箱から見ていけば間違いないし、最近はどうもそういうジャンルの箱も少ないから見るのにもさほど時間はかからない。昔は会場の全てのレコード箱を見てやる勢いで見たものだが、最近はどうもそういうガッツも停滞気味のようであるから、ほんの30分くらいでフェア会場を後に、ということも珍しくなくなってしまった。まあ、私もヤクザから堅気の世界に入った、ということなのであろうか。そう、多分そうなのだ、と自分を安心させたい。

Mos Defの「The New Danger」を聴く。2004年のアルバムである。Rawkus時代のEPとかは何枚か聴いたことはあるが、アルバムは初めてである。リリース当時、何かの紹介記事をきっかけにずっと聴きたいな、と思っていたがブックオフで最近発見したのでやっと聴けた。聴きたかった理由も思い出した。今作はバンドを従えての楽曲が結構入っていて、そのバンドにTackhead, Living ColorのDoug Wimbishが参加していたからである。ということで今までの彼の作品から考えても異色だろうとは思うのだが、何せこれ以外のアルバムを聴いたことないからわからない。しかしこの作品は一発で気に入ってしまった。何よりMos Defがラップするのみならず、歌っているのである。それがまたTerence Trent D'arbyのような、非常に魅力的な声で、なかなかにセクシーでたまらない。メロディアスだったりもするし、結構ソウルマナーの楽曲とのマッチもぴったりである。バンドを従えての曲はヘヴィなギターリフが古の「ミクスチャー」とかいう言葉を思い出させて思わず引きそうになったが、よくある「混ぜてみました」という感じに陥ることなく一歩手前でとどまるスリリングな感じが良くて、引き込まれるし、彼のラップとの相性も良いようである。中にはShuggie Otisがギターで参加したりした曲もあったりして。何より、そのような曲群と一緒にKanye Westプロデュースの大ネタ使いナンバーが入っているような、そういうヴァラエティの豊かさがまたたまらないのであった。つまり、Marvin Gayeを歌いこんだり、謎の日本語が聞こえてきたり、レゲー風になったり、ブルージーだったり、ヘヴィなロックのりだったり、ぶっといビートが効いた王道ヒップホップだったり、耳が休まる暇がないくらいだったりするのである。あまりヒップホップに明るくない私ではあるが、たまにこういうのがスッと入ってきたりするのであった。