Tokyo Storm Warning

Syd Barrett氏が亡くなった、ということをid:spo0n氏のところで知ったのだった。

ここ最近Nikki Sudden氏だのGrant McLennan氏だの、訃報が多いのだが、ここに来てまたドカンと・・・。

しかし。だがしかし。Barrett氏の死去のニュースに関しては、何か不思議な気がする。彼に関しては2枚のソロアルバム後、様々な伝説があり過ぎて(ベルリンで日本人バンドをプロデュースしただの、廃人になって母親のもとで赤ちゃんのように暮らしているだの、突如ライヴしただの)どれが本当かわからず、その実、確たるニュースがなかったものだから、「逝去」というニュースによってやっと「彼はつい先日までこの地球上に生きていた」という確固たる事実を認識することができたわけである。

不在による存在の証明、というのもなんだか凄い話ではあるが、「生きている(らしい)ミステリー」だった彼が亡くなってしまって、また1つ、世界の神話が失われてしまったような気がする。って言うか生きているうちが神話だった、というのもこれまた凄い話である。

しかし、今の私くらいの年齢の時にはもう、彼は神話になりつつあったのだった。人生っていうのは様々な形があるものである。今日はElvis Costello & The Attractionsの「Blood & Chocolate」を聴く。86年リリースのアルバムである。この年には彼は2枚のアルバムを出しており、レーベルも面子も違えば作風もぜんぜん違う、ということで大層面食らったものである。Nick Loweプロデュースによる今作は荒々しいバンドサウンドととんがりまくった彼のヴォーカルに彩られた、大暴れのアルバムなのである、とは言え泣けるバラードもあれば超ポップなメロディのゆったりナンバーもあり、でやはり安心して聴けるアルバムである。しかしここで聴けるCostelloさんの声は凄い。スピーカーから3cmくらい前に出たところに彼がいて、そしてまるで彼の唾がこっちにかかってきそうなくらい生々しい。そう、これは彼の「声」のアルバムである。これ以前にもこれ以降にもここまで「声」がドカーン、というアルバムはないように思える。もちろんバックのAttractionsの皆様の演奏も火を吹きそうなくらいあっつい。これ以降Attractionsのオリジナルメンバーでのアルバムはないから、最後に燃え尽きたアルバムなのかも知れない。ガギャガギャしたギターだのドンドコいうドラムスで血沸き肉踊る、そしてバラードで背筋までゾクッとする(大鷹俊一先生曰く「これで泣かなきゃ女じゃない」)、極端な経験ができる稀有なアルバム。