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昨日はジム・ジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」という映画を見てきたのだった。

私はとくにジャームッシュに思い入れがあるわけではない。皆大絶賛であった「コーヒー・アンド・シガレッツ」も(超小声で)悪くはないんだけど、どこをどう楽しめば良いのかな、と思ったりしたのだった。

ということでこの映画もさほど期待せず、というか非常にニュートラルな気持ち(まあ、どんなだべな、と)で見に行ったのだが、結論から言えば非常に良い映画であった。なんか晴れ晴れとする、というか。こんな完全なオープンエンディングの映画に対して「晴れ晴れ」なんて形容も変な話ではあるが、そう感じたのであった。最近見たThe PoguesのShaneに関しての映画がドキュメンタリーとしても、もしくはロック映画としても全く煮え切らない感じだったので余計にそう感じたのかも知れないが。

ストーリー的なことは色々なところで色々書かれているのでまあ良いとしても、謎解きの旅なのに全く謎が解けない、映画の最後になっても色々な結論が見えるようで全くわからない、という映画なのだけれども、主人公が色々と、まあ退職するような年齢の人間に対してこういう言葉を用いるのも変ではあるが、様々なことを考え、そして成長していく、というような過程がぼんやりと見える。そこがまず面白い。話の表の筋と裏の筋なんてどちらが表で裏かわからないものではあるが、そういう2本の筋が見えていて、そのどちらの筋で見ていっても結論には達することはできないのだが、それでも充実感が残る。なかなかない感動と映画の楽しさを味わわせてくれるものだった。また、映画ならではの「思わせぶりなカメラの動き」がしっかりと効を奏していて、そこら辺もこちらの楽しみを倍増させてくれていたように思う。

とかまあ色々考えたのだが、素直にとても良い時間の過ごし方をしたなあと思わせてくれる稀有な映画だった、ということで一つ。笑えるところも多々あるが、私が一番クスリと来たのは、イグアナ(動物ね)の名前がイギーという名前だったところか。さすが「New York Noise 2」New York Noise, Vol. 2
に収録もされているジャームッシュ、というネタであったが考えすぎですかね。テーマ曲とか挿入曲もHolly Golightlyだし。

私は映画は好きで見るのだがあまり詳しいことはわからないのだけれども。もっとああだこうだ自信を持って語れる輩になりたいものである。またしても単なる駄目感想文になってしまった・・・。

Jane Birkinの「Fictions」を聴く。新作である。前作のデュエット集は密かな愛聴盤であった。参加メンバーも素晴らしかったし。今作もゲストにJohnny MarrだのJamie Lidellだの、プロデュースというか編曲にはGonzalesだの、作家陣もPortisheadのBeth GibbonsだのRufus Wainwrightだの、カヴァーはKate BushだのNeil YoungだのTom Waitsだの、とこれまた豪華メンバーで驚く。しかしその超弩級のメンバー陣ながらもJaneさんは変わらぬソウルと真逆の方向でのソウルフルな歌声を聴かせてくれている。そしてそこがやっぱり一番の聴き所になっているのだった。メロディを丁寧に歌い上げるナンバーばかりであり、それとてさほど歌も上手ではないので危なっかしい感じではある。しかしこの堂々とした感じは何なのだろうか。曲がストレートなバンドサウンドからピアノ一本のナンバーやらヴァラエティに富んでいるのに、まったくバラけた感じはしないのはこのヴォーカルの収束力によるものであろう。あまりフレンチポップス、というものには親しんでいない私ではあるが、彼女のアルバムには、いつ聴いてもなぜか心揺さぶられる思いがする。