You Have Killed Me

Ringleader of the Tormentors

変なところにケチな人間というのはいるものである。ご多分に漏れず私もそうなのであるが。

否、寺山修司の言葉を借りれば「一点豪華主義」って奴だ、とか開き直って、肩で風切って歩いていたりしたものであるが、やはりここ最近、ま究極的にはケチってことなんだろうな、と思い始めたのだった。

こと食べ物に関してはその傾向は顕著で、ラーメンを食べるときも煮玉子を我慢、とか回転寿司の際には基本は飽くまで105円の皿、ちょっと頑張って157円、清水の舞台からダイヴして210円、それより上の金額の皿?え、そんなのあるんですか?という状態であって・・・、とここまで書いてきて何だかとっても寂しくなってきたぞ。

そんな私だからアイスクリームも基本は103円、なのである。は?126円?150円?そんなのあるんですか・・・。というアティテュードであるから、昨今のセヴンイレヴンのアイスクリームの高級化、というか103円で買えるアイスは超マイノリティで、大半はそれを軽くオーヴァーするもの、という傾向は目を覆わんばかりの惨状と言わねばなるまい。

しかし。しかしだがしかし。今日は思わずアイスのケース内のハーゲンダッツと目が合った。ブルーベリー。チーズケーキ。ありゃこれは絶対美味いだろうね、今までハーゲンダッツなぞ食べた回数は一桁に違いないのだが、多分間違いない。とか思い始めていたら「季節限定」というマニア泣かせの文句が。

で清水の舞台からダイヴ、そしてモッシュ、の末2種とも味わうことになったのだが、これは。

神が見えた。どれくらいの勢いかと問われれば『ミスター味っ子』で丼の蓋をずらした瞬間に光が出てくるシーンが印象的だが、それを思い出してもらえれば、と異様に分かりづらい形容ではあるが。兎に角、「こんなもの食べてはバチが当たる」的な畏怖の念を抱かせるに十分な美味しさで、どちらも素晴らしい上質のアイスクリームであった。

結論:高いのには理由がしっかりあるのだなあ、というバカみたいなことに気づかされたのであった。この歳になっても色々新しい発見、というものはあるのだ。

と自分のバカさ加減を露呈しつつもMorrisseyの「Ringleader Of The Tormentors」を聴く。もうThe Smithsの幻影を彼に求めている方々はいまだいらっしゃるのかどうか疑わしいが、最早彼はそういうのに関係ないところに来てしまった。そりゃ解散〜ソロデビューから20年近く経っているのだから至極当然なのであるが。今まで、ソロアルバムはどれも愛聴してきた私であるが、どれも「平均して」良いね、という感じであった。しかしTony Viscontiをプロデューサーに迎えローマで録音されたこのアルバムは、遂にここまで来たか、と唸らせられるヴォーカルアルバムである。曲のドラマティック加減もかなりマックス、モリコーネまで参加したストリングスはもう大変ゴージャス、加えてギターの2人は今までと変わらぬ面子なのに、ダイナミックさを増した演奏、というかなり怒涛の気合いが感じられる音楽ががっしり入っているのであった。そして今回は兎に角曲が良い。どの曲も盛り上がってしまうのは、多分私だけではないはずだ。やっとMorrisseyの音楽、というものを全身で感じることの出来るアルバムが完成したのだった、なぞと至極大仰な感想を抱いたくらいにして。しかし彼も白髪が増えたなあ、と思ったのだけれどその貫禄に相応しいアルバム。ちなみに歌詞も相変わらずなんか凄いことになってる。「パゾリーニは俺だ」とかって普通の人は逆立ちしても出てこないはずだなあ・・・。