Infra-Red


しかし今更ながら勝ち組負け組、という言葉は嫌なものであるなあ、と思うのだった。

何事も物事を2つに分けるのは至極単純明白で、分かりやすい。しかし上記の勝ち組負け組の分け方は、本来複雑で分けがたいところを一見簡単に2分化しているから新鮮で優れたものに見えるかも知れないのだけれども、それにしても大雑把過ぎて、まるで現実の事象に基づいているのではなく、妄想、というか机上の空論でもって分けているようなものに思えたりする。

且つ、その勝ち負けの分け方の根底にあるのは富国強兵、というか、そういう言葉は悪いがえげつない思想に基づいているような気がしてならない。でも、そんな概念であってもわいわい持て囃されてしまうわけであるから、何だかこの国はもう思考停止しているのではないだろうか、とか思ったりしたわけである。

ま、それとて社会に於ける格差を容認してしまうような首相が君臨している国だから実に当然と言えば当然の結果なのかも知れぬが。

私は物事を単純化するということは凄く好ましいと思うのだが、本来単純にできないものを無理やり単純にして(したつもりになって)、それで鬼の首を取ったようになっているなんてのは愚の骨頂だなあ、恥ずかしくないのかなあ、とか思ったりするのであった。

ま、それは勝ち組負け組、って概念だけに限った話ではないのであるが。そしてムチャクチャなことやって新鮮に見えるだろう、と勢いづいているような輩も恥を知れ恥を、と言いたくなったりするのだった。

とまあ、思考停止の好例である私が言っているのだから病巣は深い、ということか。まあ、何か疲れてるのかも知れぬ今日は。だからPlaceboの「Meds」を聴く。思えばもうデビューしてから10年にもなるのだなあ、と感慨深くもなったりする。まだまだ新しいバンドだと思っていたのだが。今作はベスト盤を挟んで5枚目のアルバムである。私、このバンドは本当に理想的なバンドだと思う。例えこんなにメジャーになっても、どこかおおっぴらに触れてはいけないような、ちょっと陰の部分がしっかりとあって、しかもそこに依存することなく様々な音楽的な冒険を試み続けている、というのはなかなかできることではないと思う。今作でも打ち込みも若干導入しつつ、またThe KillersやらREMやらのメンバーをゲストに迎えつつも、ダイナミックなギター中心のアンサンブルと、陰りある、しかししっかりとしたメロディでぎゅっと纏めた完成度の高いアルバムなのである。Molko氏のヴォーカルも独特のよく通るけどスカしたような、相変わらずの声でやっぱり大満足なのであった。今作はセンチメンタルな部分がいつもよりも多めに感じられて、奥行きの深い作品に仕上がっているように思うのだがいかがだろうか。