Alicia


私は食に関して保守的である、ということはもう何遍も何遍もここで述べているので、またかよ、と思われる方が多いかとは重々承知であるが、やっぱり今日もそういう話なのである。

私は今日の昼には空腹で餓死寸前であったのだった。そんな意識が朦朧とした状態で車を走らせていたら丁度良い場所に「スープカレー」の店が。

結構前に話題になり、そしてブームになっていた(気がする)スープカレーであったが、私は「牛丼をつゆぬきで」という人間なので、恐怖感から敬遠していたのであった。スープカレーとのニアミスは今まで何度かはあったのだが(つまり、単に入った店にスープカレーもあったけど、頼まなかった、ということである、平たく言えば)今日初の邂逅となったのであった。

そう、ご飯が水っぽくなるのが苦手な人間だから大丈夫かな、とか思っていたがその新しくできたと思しきお店では食べ方もしっかりと説明してあって、まあいけそうだ、となったのであった。

店内ではレゲーがかかり、(というかかなりダブ寄り)そして店員の女の子も、えー、大変可愛かったので素晴らしい店だ、となったのであった。ところで、話がずれるが齢31にして私は好みのタイプが言えるようになったのである。ま、別にここで述べるまでもなく。ここの店員さんもそんなタイプの方、であった。

辛さは6段階あり、私はおススメの辛さ「2」を頼んだのであった。私は辛いのが苦手ではないが、激辛に関してはそこまでしなくても、という人間なので「2」くらいであろう、と判断したのであった。

しかして私の注文したものが運ばれてきたのであるが、件の可愛い店員さんは眩いばかりの笑顔で「チキンスープカレーの3をお持ちしました」と言ってきたのである。な、何?私は「2」を・・・。と思ったがまあ、その笑顔が曇るのは嫌だし、ま「2」も「3」も大差ないだろ、と思い不問に付したのであった。

慣れぬスープ状のカレーをスプーンに掬い飲み込んでみると、あなるほど、こういう液体具合ね、そうか。そしてそんなに辛くないじゃないかうおおおおおおおおおおおおお後から辛い!辛すぎる!となったのであった。

いや、美味いのである。美味いのであるが、そう味わう間もなく辛さの波状攻撃を喰らうのである。そしてご飯が若干少なめであるので、逃げ場も心許ない。

ということで「美味しいね」と頭の中では思いつつも身体は「辛ぇーよ」とばかりに汗を噴出してきていて、止めどなく出る汗を拭いながら食したのであった。いやはや。

水っぽくなるのはちょっとなー、という心配を上回る想定外の辛さであったので、結果としてスープカレーは食べることができる、というかアリだな、という結論に至ったのではあるが、あの辛さは・・・。やはり「2」だったら大丈夫だったのだろうか。また検証せねば、となって食べ続けるうちにハマっていったりするのだろうか。

そして1つ思ったのは、こういう辛いものを食べるときには誰かと一緒の方が良い、ということである。店内では1人で食べているのは私しかおらず、そんな1人で来ている客が必死の形相で汗を拭い拭い食べているのだから、かなり何か、別に誰に見られているわけではないが恥ずかしい気がした。味方がいない、という気がした。余りにもHelpless過ぎる、という気がして、自分は凄く小さい、という気がした。って本当、スープカレーが辛かった、というだけでなんで話がここまでなってしまうのだろうか、私。ま、「辛ぇーな」とか言い合って複数人で食べていればもっと何か理解可能な範囲だとは思うのだが、1人で来ている客が大汗かきながら黙々とスプーンを口に運んでいるのはちょっと、意味分からないかも知れないように映るかもな、と危惧した次第であった。

ま、足繁く通って、辛さに順応したいところである。そしてあの店員さんにも顔覚えられるくらいに(以下略)。妄想がちなのは4月になっても変わらずなのである。Emilie Simonの「Vegetal」を聴く。映画「皇帝ペンギン」のサントラでも御馴染み、フランス人の彼女のアルバムである。デビュー作は結構愛聴した。エレクトロニクス多用のバッキングに彼女の可愛らしいヴォーカルが乗っかる、それだけだったら毒にも薬にもならなさそうだが、何か過剰なまでの甘さが凄く印象的な、結構強烈なアルバムであった。The StoogesだのThe Velvet Undergroundのカヴァーもかなり格好良かったし。で、今作であるが、基本線は変わりない。しかし、前作で感じられた密室性は後退し、ライヴも重ねた結果なのかも知れないがよりダイナミックな表情を見せてくれる。普通にああ、可愛らしい声だよなあ、このエレクトロニクスっぷりも夢見心地やね、とか思ってのほほん、と聴いていると強烈なビートが出てきたりしてぶっ飛ばされる。絶対この人はとんでもない人である。こんなにルックスも素敵だし、声も可愛いけど、絶対にマッドな感じがするのが魅力なのだなあ。