Safe From Harm


そもそも何故今回鶴岡方面に行こうとなったのか。それもイマイチ曖昧ではあるが、某社長に誘われたから、であったのだった。

ということで朝8時前に某社長宅近所で待ち合わせ。何でも彼は前の晩飲み過ぎたらしく、早くも暗雲が。まあ、それはいつものことではあるのだけれども。

道中色々お話ししながら、11時くらいに鶴岡着。とこれでは思いっきり割愛しすぎなので軽く説明をすると、実は3時間くらいかかっているのである。しかも途中では涙の月山越え。雪は道路にはなく走りやすいのだが、ふと脇に目をやれば1階部分が完璧に雪に埋まった家屋や、何か白い壁のようになっている道路脇の雪。また、様々な場面でイキの悪い車に行く手を阻まれつつ、また異常にイキの良すぎるトラックに後ろから迫られつつ、という道中であった。

とくにイキの良すぎるトラックが迫ってきたときには、スピルバーグの名作映画『激突』を思い出したりもしたが、別にそのトラックが断崖からスニーカー残して転落、ということもなく単に勢い良く(勢いあり過ぎだったが)抜いていく、という平和なエンディングであった。ところで脱線したついでだが昔『激突2』という映画を見たことがある。全く話の内容は違うのに勝手に日本でタイトルを「2」にされたのだろうか、と子供心に思った記憶がある。

大分話が逸れた。鶴岡ではまずブックオフへ。某社長は本を私はCDを物色。安売りコーナーには結構惹かれるタイトルがあったが、いつも遠征ブックオフの際には私はテンション上がりすぎてどうでも良いものまで買ってきてしまい、ほとぼりが冷めた頃に、なんでこんなものを・・・、となってしまうのが常なので心を鬼にして放置してきた。しかし。通常価格のコーナーにCoilのCD(注:日本の2人組ではなく、また鬼怒無月らのユニットでもない)があるのを発見した際には腰が抜けた。今回私は「アナログで持っている奴とか、昔持ってて売り払ってしまったものを買うのはやめよう」と決めていたのだが、1軒目で前者の決意は脆くも崩れ去ってしまったのであった。見ればこのコーナー、PhewだのLydia Lunchだのある。一体どういうことなんだ・・・。

鶴岡のブックオフには心して臨まねばならぬ、と心を引き締めて(注:少なくとも私は。某社長はまあまあだったようである)もう1軒のブックオフへ。全滅。私も某社長も手ぶらで店を出る。あの1軒目での衝撃は一体なんだったんだ。

ところでここまで書いて来てそういえばブックオフで店員に、いらっしゃいませおはようございます、と言われたことって生まれて初めてな気がする。そんな時間にブックオフ来たことないもんなあ。

さて、なかなか安定した仕入れは難しい、と感じつつ、でも腹は減る。全く鶴岡は初めての私と、何回かは来ているが食事はしたことのない某社長のコンビは昼飯を食べる場所を探すことにする。コンビニでなんか『マップル』とか読むが芳しくない。ならば、と途中にあった駐車場大混雑で賑わっているような食堂に行くことに。これは地元の名店発見じゃねぇの、と大いに盛り上がる。何とか店内に入ると、広めの店内にテーブルとお座敷。まさに老若男女が集っている。とりあえずラーメンと冷やしラーメンを注文する。この時点で実は不安な要素がメニューからは散見できる。「から揚げラーメン」「天ぷらラーメン」「納豆ラーメン」牛乳とチーズベースの「みるきぃらーめん」・・・。やべ創作系?と2人で不安を語り合うがとりあえず我々は結構スタンダードなのを頼んでいるから大丈夫じゃないか、と落ち着く。

さて、落ち着いたのは良いがさっぱり来ない。見れば店の半分くらいの客が手持ち無沙汰に待っている。全く厨房が客に追いついていない。あいやー、と腹が減り過ぎて無言で煙草を吸い続けて30分。やっと運ばれてきた。まあ、美味しかったのだが、待たされすぎてブルーになってしまったので、味はともかくちょっとあの食堂はいただけないな、という結論に2人落ち着く。

あの食堂を抜本的に改革するにはどうすれば良いか、とか車中で語りつついると次の目的地「CD-brain」に到着。店の外のダンボールに入ったレコードが「10円」という世界に不安を覚える。中に入ると天井までの棚にびしっとレコードが。「NEW WAVE」という仕切りに興奮を覚えガシガシ見て行くとおおあるわあるわThe March Violets、Mass、Rema-Rema、Pankow、The Fall、Foetus。所謂一級品的New Waveはないが、私が求める「変なNew Wave」(某社長談)はぞろりとある。おおおお。・・・高ぇ。1000円切ってるレコードがない。もしこれらが1000円切ってたらがちっと買うところなのだが、何か途端にテンションが下がってしまい、何かそんなに金出したくねえや、という変に暗い気持ちになってくる。結局3枚とCD1枚(またCoilのCDなのであるが大丈夫なんかね、私は)。それでもFoetusの日本盤帯付き12インチ、しかも価格はそのまんま、というのは努力賞だと思う。しかも上記の3プラス1枚の内、2枚は790円のもの、というのは大健闘だと思う。

実はこの「CD-brain」が今回の鶴岡行きの私の中での目玉、であった。それが上記のような哀しみの結果に終わってしまったことでちょっと切なくなる。某社長もあんまり、だったようである。あまり在庫が動いているとは思えないので、もう行くことはないかも知れない。そう考えると「月は遠くから見ているから美しい」という言葉を思い出したりして、センティメンタルな気分になったりしたのだった。

あまり長すぎると読むのが大変だと思いますので、第一弾はここまで。Massive Attackの「Collected」を聴く。ベスト盤である。日本盤は2枚組のエディションも出ていて、これはナイス企画だと思う。私はMassive Attackは大好きである。大好きなので「100th Window」を楽しめなかった時にはちょっと悩んだ。私はMassive Attackについていけるのか、と。しかしこのベスト盤を聴くと、私がMassive Attackを好きだった理由がはっきりとわかったのだった。それは「シンプルさとゴージャスさのせめぎ合い」なのだ、私が好きだった理由は。ファーストとかを聴くとサンプルのドラムとかベースを組み合わせてちょっと音乗っけてラップ乗っけて、という凄くシンプルな作りの曲もあれば、その骨組みにりえないくらい重厚なストリングスと鍵盤が、でもスクラッチ入りとかそういう曲もあってそこらへんのギリギリのバランスがとても新鮮だったし、心を打ったのだった。セカンドも肉付きは良くなっているがまあ、そういうアイディアの素晴らしさには唸らせられる。そこらへんのせめぎ合いがドンドンなくなってしまって(超私的な意見であるのでお気になさらぬよう)整合感がドンドン増していって、まあそれはそれで悪くなかったのだけれども、何かもっとゴツゴツが欲しかったのだなあ、ということをこうして俯瞰して聴いてみると感じたのであった。そういう意味でも非常に有意義なベスト盤である。ただ、新曲では何かギリギリのバランス具合が感じられる。Terry Callierのヴォーカルも素晴らしいし。ということで未来に対しても希望が持てる、そして過去の素晴らしい作品も駆け足で楽しめる、ナイスなベスト盤なのであった。色々ごちゃごちゃ上で書いているけれども、結局はやっぱり好き、というダメなオチで。