Chimacum Rain

今日2つ目。

私はまあ今更ではあるが、10代の若者相手の仕事をしている。私の年齢の約半分前後の連中と接する仕事なのであるが、色々考えさせられることがある。

まあ、なるほどな感動ブームか、とかくうみんの人気はここ最近やっぱ凄いね、とかそういう素朴な部分で色々考えているのだが。ちなみにコウダクーミンってカタカナにしてしまうと幸田シャーミンのようだな、とか思ったがこれは受け手を選ぶネタでしたね、はい。

それはそうと、過日、長い1日を終え、馬鹿話をダラダラしていると「ピストルズって知ってますか?」と突如16歳に尋ねられたのだった。咄嗟にボケは思いつかず「あーSex Pistols?いや、知ってるも何も・・・」「えーそうなんですか!びっくりー!シドって格好良いですよね!?」この時は咄嗟にあーSyd Barrettね、というボケを返すこともやろうと思えばできたのだが、そんなことやってる場合ではなく、「あーそう?いやー好きだよ・・・」と頑張って相手がドン引きにならない程度の会話で済ませた。「ドン引きにならない程度」、というのは缶入り3枚組みとか、The Professionalsとか、Jah Wobbleとか、元Duran DuranAndy Taylorのバックをしたりしたけど何か騙されたって怒ってたんだよSteveが、とかThe Beatlesが好きだからクビになったんだよGlennは、とかそういう話はできない、ということである。彼女の持つツタヤの会員証には、多分忘れないようにメモったのであろう付箋紙に「グレート・ロックンロール・スウィンドル」と書いてあって非常に微笑ましかった。

しかし、これはどっからこういう情報が入っていくのだろうか、今の若い方々には?数年前にも同年代の女子から「Sid Viciousって・・・」という話を持ちかけられた。どっかで定期的に若い女子向けにSid Vicious講義でもやってんのか、各地区ごとに。しかも何故かSidのみでPaul Cookが、とかとはならないのはどうしてだ、って当たり前か。しかも何故Sex Pistolsだけなのか、Sham 69の情報とかはないのだろうか・・・。

と様々な老人の疑問は絶えぬが、1つはっきりと分かるのは、実に今更なことなのだけれどもSid Viciousは明らかにイコン、となっているのだ。それもある世代だけではなく、何世代にも渡って、ということなのだ。しかしまだまだ彼女達の中では「パンク=Sid Vicious」という公式にはなっていないようではある。何せ彼女達の口からパンク、という言葉は出てきたことはないのだから。

ここでやはり教育、という立場から行くと「パンク=Dead Kennedys」とか「パンク=The Buzzcocks」とかいう更なる公式を教え込むことが何よりも大事なのではないか、と思ったがまあ止めておこう。

Linda Perhacsの「Parallelograms」を聴く。昔持ってたが何故か手放してしまい(多分私の心が曇っていたため)聴きてえなあ、と思ったら紙ジャケで出ていた。しかも韓国のレーベルからで世の中色々あるもんだなあ、としみじみ。1970年の作品であるが、彼女はこれ1枚しかリリースしていないようである。しかも長年ハワイの人、と聞いていたがそうではなくカリフォルニアの人だそうな。色々事実、というものは後々明らかになるものだなあ。よくサイケ、とかアシッドフォーク、とか言われるわけであるが、どちらかというとそういう感触(とは言え何がそういう感触なのだかはっきりとは私の中でしていないが)よりはもっと素朴な感じで、曲を作ってレコーディングしたらそういう空気が出来ていた、みたいな偶然を感じさせるような、そんなアルバムである。アクースティックギターと多重録音ヴォーカルが非常に印象的な音楽で、最初に思い出したのはWendy And Bonnyだったり、Quarteto En Cyだったりするが、これが1人の声で作られているのにまず驚く。曲も粒揃いで、どこか浮世離れした感じを受けるのはその強烈なシンプルさと声の美しさ、そして音の処理の仕方のせいだろうか。とは言えなんでこれ売ってしまったのだろうか、人間、時に自分の行動に首を傾げることもあるのだ。