Chiku

実はこの2,3ヶ月、「Derek Baileyが死んだらどうしよう」という思いに駆られていたのであった。

勿論人間だし、老齢だしそう遠くもない話かも知れない、と思っていたのである。彼のレコードを聴くたびに心の底から感動すると同時に、そういったちょっと不安な思いもあったのである。

でも、ついこの間新作が出て、しかも右手の異常から回復したという話だったので結構安心して、まだ先の話だな、と思っていた矢先の訃報には本当に不意を突かれた、というか何だか、何が何やら、という感じである。

彼の音楽に出会うのは結構遅い方だったけれども、その短い間に熱狂的に聴きまくったように思う。それだけ彼のギターには何かがあったのだった。ご冥福をお祈りします。

ということでTony CoeとDerek Baileyのデュオアルバム、「Time」を聴く。彼のソロが圧倒的に好きな私ではあるものの、このクラリネットとギターの絡みからなるアルバムにはあっつい何かを感じることが出来る。普通、何かDerekさんのギターと何かの絡みだと、思いっきり熱狂的になりすぎるきらいがあって、それはそれで良いのだけれども、淡々とした、それでいて狂おしく盛り上がるようなソロには敵わないのかなあ、とか感じていたのであるがこのアルバムはクラリネット、という楽器のせいもあるのか、ひたひたと寄り添いながら、且つ大胆に飛翔しながら、しかも意外にメロディックな旋律も耳にできる、という非常に新鮮な音楽で愛聴していたものだ。そう、あまり「断片」的な要素が前面に出ることなく作り上げられている作品だと思う。しかしこれから未発表の音源が出るようなことはあっても、新作、というものはないのだ、ということを考えると、猛烈に寂しい気が突如してきたのであった。