This Is LIfe

PCには「delete」キーというものがある。

と別にそりゃお前当たり前じゃないか、と思われる方も多数いらっしゃるかとは思うが、実は私はこのdeleteキー、今まで打ったことがなかったのであった。

つまり、字を消すには別に「back space」で良いし、なんか「delete」キー一番右上で遠いし、とか思っていたのであった。先日識者と話した時にその話をしたら大層驚かれたが、私も驚かれたことで、じゃあ使ってみようか、となったのであった。

意外に良い。何か遠いしなあ、とかいうのも杞憂であり、逆に孤高に位置にあるので押し間違えが少なく(どうしても我が横長のcompaqのマシーンだとback spaceを押す際にhomeボタンを押したり、という事故が度々発生していたので)、結構スムーズに行くのであった。私はブラインドタッチも満足にできないくせにキーボード打つのは、どかかかかかかか、とかなり勢い良くいくので有難い。そうか、こんな発見ってあるものなのだなあ。

しかしふと思えばこんな風に人生に於いても「delete」キーというのはあるものなのかも知れない。否、別に全てを消去する、とかいうキー自体の意味ではなく、私の今回の経験したような「今まで一度も触れたことも何もしたことなかったものが、意外に快適、もしくはそれしかない、という状態になる」ということである。

ある程度年齢を重ねてくると「これやんなくても良いな」とか「それ知らないけど別に知らなくても良いし」というようなことって結構増えてくるように思う。しかしそこで何かすることって意外に大事なのかも知れないな、と悟ったのであった。

とは言え私自身が大いに保守的な人間であるから、今回のdeleteキーの件を教訓にしていきたいものである。

Jarboeの「The Men Album」を聴く。元Swansの歌姫の2枚組の新作である。何でも事故で一度死に掛けたらしく、ここ最近のリリースラッシュは生きていることを実感しながら、という形らしい。何はともあれ充実しているようである。このアルバムは様々な方々とのコラボレーション作品を収録しており、タイトル通り男性の方ばっかりである。Jim Foetusさんとか、Blixa Bargeldさんとか、David Jさんとか、Chris Connelyさんとかそういうおっかねー名前がずらりと並んでいる。アートワークもJarboe嬢のタトゥー入りの後姿がジャケットだし、何とも怖いなあ、という感じではある、と珍しく私も思った。ただM. Giraさんとは別れたのだろうか。ここが気になるところではあるが。でも今回のブックレットにはGiraさんによる不気味なドローイングも掲載されておりなんだかんだでつながりはあるのかも知れない。さて、音楽的には「Guitars」と「Rhythms」と各ディスクにそれぞれタイトルが付いているとおり、1枚はギターの音中心、もう1枚は打ち込み気味のビートの効いた感じ、となかなか上手い具合に別れている。同じ曲を各ディスクでやっていてもアレンジがガラリと違うので大分表情が違う。結構快活な感じでスタートして「おお意外だなあ」とか思っていると後半になるにしたがって叫びやら重苦しい空気やらが現れてきてああやはり、とか思わせられたりする。しかし昔の彼女のプロジェクトであるSkinとかに比べると明らかに前向きで徒な内へと篭る感じがない。そこらへんがやはり彼女の死に掛けた経験から来ているのだろうか。深いな、人生。ちなみに相変わらずの冷たく、美しい声は健在どころか磨きがかかっていて感動させられる。