Hanging From The Grapevines

今日2つ目。

そもそも人生自体が仮の住まいであるのは百も承知であるが、今のようにアパート暮らしだと自分の住んでいる地区、町に左程帰属意識が持てないものである。

私の場合30年近く一箇所に住み続けていたわけであるから、それに比べれば今住んでいるところを「わが町」と胸を張って言えないような、というかあまりそういう意識が生まれないのも当然と言えば当然のことなのかも知れない。大体知り合いは近所に住んでいないし、そもそもこのアパートの住人だってほとんど会わないし、良く知らないわけである。

しかし市民センター、というものが近所にあり、その「市民センターだより」なるチラシに素敵なものがあった。「市民企画講座 ジャズを楽しむ」。サブタイトルが「ジャズの魅力を知り、一緒に楽しみましょう」である。内容は4週にわたって2時間ほど講話とレコード鑑賞、という何とも言えぬ、こう未知の世界であって、実に面白そうである。

思えば私はジャズなぞよくわからないし我が家にはジャズ気味なレコードはあるが、最早ジャズだか何だか、音楽だかも怪しいような、突き抜けたような奴がメインな感じであるから、一度徹底的に講話で勉強してみよう。『ジャズ・オルタナティヴ』とか『ジャズ・アヴァンギャルド』とか『日本フリージャズ史』とかばっか読んでいてはいかん、と思い立ったのである。

何せ小学5年生以上誰でも参加でき、無料である。これをきっかけにこの地区の同好の士と親交を深め、仮の住まいの仮の住まいであるこの町に帰属意識を・・・、とか画策していたのだが、12月の毎土曜日の夜なのである、この講座が。何かと忙しい年末の週末の夜・・・。

泣く泣く断念である。「わが町」計画、またの名を「帰属意識」計画はここに来てまた頓挫なのであった。

しかしどういうの聴くのかなあ、本当に面白そうではあるのだが。Ris Paul Ricの「Purple Blaze」を聴く。解散してしまったQ And Not Uのヴォーカリストのソロアルバムであるが、これが最高に素敵なのである。Tim Heckerのプロデュースなのでバンド時代とはかなり違う世界だろなあ、と思っていたがもうこの音楽はBen Wattのような、つまり所謂ひとつのネオアクースティック的な、そういう繊細な歌ものに仕上がっていて、本当にビックリである。エレクトロニクスもバッキング程度には入ってくるものの、基本的にギターと声のアルバムである。ボッサ・ノーヴァ的な展開もあり、全く飽きることはない。何より高めの声が良いし、音の隙間具合も良い。そして曲がまず素晴らしく粒揃いである。こういう作風で決して湿っぽくならない、というのは非常に新鮮で、全く予期せぬところから不意打ちを食らわせられたような、そんな嬉しい一撃、否、一枚。しかしDCハードコアシーン、というかまあDCに限らず、なのだが奥が深いなあ。