Wicked Game

携帯電話には電話帳、という機能がある。

当初は私はこの電話帳の使い方は分からなかったものであるが、今では結構な人の名前やアドレス、電話番号がその中には入っている状態である。

しかし。この間何気なく電話帳を見てみたのだが、わからない名前がたくさんある。こいつはあいつか、それともあいつか、というような名前がたくさん出てきて非常に焦った。

それはちょっと前の話なのであるが、いまだにどこでどうやって会ったか、どうやって知ったのか、どんな顔をしていたのか、男なのか女なのか全く思い出せない名前もある。これは一体どうしたものか。

しかし携帯電話を持ったおかげで人とのコミュニケーションが密になった、とは実際思うのだが、こうやって覚えていない名前が電話帳に仰山ある状態になってくると、果たして密にはなったものの、人との出会いとか何とか、そういうものの質が上がったのかどうか。もしかしたら携帯電話のお陰でなんか錯覚して、知らず知らずのうちにかなり良い加減な感じにしか出会いとか色々捉えられなくなってしまったのではないだろうか。

と膨大な謎の電話帳の中の名前を見て内省したりしたが、Chris Isaakのベストを聴く。今何してるのかなあ・・・。89年くらいのデビュー当時から、甘いマスク、渋い震える声、そして時代錯誤的なリーゼントで御なじみの彼である。まあ、音楽的にはシンプルな「声+楽器」の落ち着いたナンバーばかりである。どっかのレコ屋ではロカビリー、とか書いてあったがその言葉からイメージされるような、快活な音楽ではなく、渋い、空間の多い音楽である。決して新しいところはないものの、逆にそれが彼の持ち味になっていて何と形容して良いかわからないことになっているのは、立派に新しいと思う。David Lynchの「Wild At Heart」に楽曲が使用されたことからちょっと人気が出たりしたが、そのLynchとのつながりから見ていけば、現代版のRoy Orbison、みたいな感じで捉えてみると良いのだろうか。とか色々考えたりもしたが、何も考えずにリラックスして聴くことが一番だなあ、とか馬鹿みたいな感想を述べたいところである。