Left Behind

(今日は昨日の日付で1つ、今日の日付で1つ、の合わせて2つアップしております。ご注意ください。)

細野晴臣の『分福茶釜細野晴臣分福茶釜という本を読んだ。これはワールド・スタンダードの鈴木惣一郎と氏の対談を基にした本である。

氏の発言はとても面白い。とくに去年、新作がリリースされるに当たって様々なインタヴューを読んだり、また同アルバムのライナーとかを読んだりして、凄く面白かった。おかしなことを言ったりしているのではなく、ちょっとしたこと些細なことに関して、物凄く自分なりの拘りがあるというのが透けて見える、そういう発言ばかりだったのである。何故1940年代なのか、とか。昔からのファンの方々にすれば当然も当然の話なのだろうけれども、何せ新参者なので実に一気にひきつけられてしまったのであった。

ということでこの本も楽しみながら読んだ。ここでは、更にテーマが絞られていて、音楽のことというよりも、もっと、人生についてとか世の中についてとかはたまた自分についてとか、そういうものに関しての話が多い。そしてそのどれもが氏の経験や、何かの思想に裏打ちされたばしっとした話になっている。だからとても説得力があって、なるほどなー、と唸らせられる瞬間が多々あり、非常に刺激を受けることは確かである。

ただ、逆にそういう氏の発言を周りが何か有難がりすぎてしまっているのではないか、というきらいがある。鈴木氏が話すたびに面白いから本にしようとした、という当初のアイディアは実に頷けるのだが、ちょっとテーマ的にも、そして帯とかにしても、ちょっとパッケージングしすぎなのではないだろうか、という気がした。ここでの細野氏の発言は勿論とても面白いわけである。でも、もっと何気ない形で目に触れる機会があったら(たとえばコラムとか)もっともっと奔放な魅力を放っていたのではないか、という気がしてならない。ただ、そうなってくるとそれらが、こちらの目に触れる機会はとたんにないも同然に近い状態になってしまうわけで、実にジレンマを抱える羽目になってしまったり。

まあ、小難しくああだこうだ言うよりも黙って細野氏の語り口を思い浮かべながら、あんまりそれ以外のことに考えを巡らせずに読むのが一番、ということか。CSSの「Donkey」を聴こう。ブラジル出身(現在はUK在住)の男女混合(とは言え男性は1人だけど)バンドのSub Popからのセカンドアルバムである。私の場合最初にファーストアルバムからの12インチ群で触れていたので(何も情報がないままに、リミキサーがDiploにSpank Rockでブラジル出身、とかだったら「バイレ・ファンキがSub Popから?」となるではないですか!)その印象が強く、ファーストアルバムを聴いて意外にロックバンドとしてしっかりした音「も」出すんだな、という印象であった。しかし今作は強烈にロックバンドとして引き締まりまくった音になっていて正直びっくりしたのであった。そう、ファーストはダンスものもやりつつバンドサウンドもあり、な感じでもあったのでここまでバンドとして小手先ではなくビルドアップされた姿になっているとは思いもしなかったのである。過酷なツアーを続け、その合間に曲作りやら何やら行っていたらしいし、バンドの体力ががっちりとついたことが窺えるサウンドである。でもそれでいて微妙ないかがわしさとか、良い意味での素朴さがしっかりと残っているのが奇跡的。キャッチーなリフとメロディが瑞々しくてクセになるし、Lovefoxxx嬢のヴォーカルも迫力が増して聴き応え十分である。んー良いバンドだなあ、としみじみしてしまうだなんて、想像もしていなかったなあ。