Fire And Rain

朝起きてすぐはまだ人間にはなっていない私である。

人間ではない謎の生物はパンを齧り、コーヒーを飲み、歯を磨いたり何だりして車で出勤する。その過程で段々と人間(のようなもの)になって仕事に突入するわけである。

その人間(のようなもの)になる過程で必要不可欠なものは煙草と缶コーヒーである。これは欠かせない。ということで途中で車を停めて缶コーヒーを買うわけである。昨日もそうだった。

まだ寝ぼけた謎の生物状態で自動販売機に向うと、なんとその自販機には缶コーヒーの横に一台ミニカーが入っているのである。120円、と値札まで缶コーヒーと同じように付いている。ほほう、この自販機を使うのは久しぶりだが、ミニカーに目のない私に対して何とも粋なことを!と感動しながら240円入れてそのミニカーのボタンを押し、飲みたいコーヒーのボタンを押して出てきたものを見ると。

缶コーヒーが2本出てきただけであった。

なになになになに何すや、と思いよくよく自販機に入っているミニカーを見ると「非売品」というシールが・・・。だったら紛らわしく「120円」とか言う値札つけるな!とか思ったりしたのだが後の祭りである。すごすごと車に戻り出勤した。2本の缶コーヒーと共に。

寝ぼけた頭に対してあまりと言えばあまりの仕打ちで、私がアメリカ人だったら即訴訟に発展させてやるところなのだが、まあうまい話には何かある、ということを身をもって経験してしまったのであった。しかし何ともやり切れない話である。わーいと飛びつけばそういうトンデモな結果に終わるわけで、最近報道で話題の円天の話もこういうことだったのだろうか(違う)。

ということでThe Isley Brothersの「Givin' It Back」を聴く。実は(小声で)私あまりこっち方面の音楽には明るくなくて、彼らの作品はこれしか聴いたことがないのである。とは言えこのアルバムは大好きなのである。1971年リリースの作品で公民権運動やらヴェトナム戦争やらで激動だったアメリカで「肌の色の壁を取り払った」作品、らしい。確かにJames TaylorBob DylanにStephen StillsにNeil Youngのナンバーなどのカヴァーがずらりと並ぶ。しかも悲痛な色合いを帯びた伸びやかな声から、甘く溶かすような声まで、様々なIsley兄弟の「声」でもってがっつり調理している作品である。音も生々しく、ジャケットのシリアスな感じはビシバシと伝わってくるようである。とは言えそういうテンション一辺倒ではなく、適度な甘さも効いていてそれがアルバム1枚通して聴くことをスムーズにしているように思える。長尺なカヴァーが多く、10分前後のナンバーが2曲もあるのだが全く気にならずについつい聴いてしまうのであった。フリーソウル(!)クラシックとして名高いStephen Stillsの「Love The One You're With」のカヴァーとか、Neil YoungJimi Hendrixのナンバーを2in1にしてしまったカヴァーとか、本当に聴き所満載過ぎて困る。