Groove

そういえば、とある人の日記で「DJを始めたきっかけは失恋」というのを読んで、おお時代というものは変わったのう、とか思ったのである。

別にそれについて揶揄したいとか言う気持ちはこれっぽっちもないし、良い悪いを言いたいわけでもない。単に、「失恋→楽器」ではないのだなあ、と何と言うか私くらいの世代との違いをまざまざと認識させられたのであった。

まあ別に私は失恋したらば、とくにこれ、というか、別にドカーンと何かをするきっかけになるようなことはなく、普通に音楽聴いたりしてたな、とかそういう話は別に良い。ここで私が述べたいのは、やはりこういう「失恋→DJ」とかいうのが普通になってくる世の中ならば、音楽の聴き方も変わってくるだろうなあと感じた、ということである。

つまり音楽を聴く時に「DJをする」から聴くのだろうか。音楽を聴いているから「DJをする」のだろうか。こういう鶏が先か卵が先か、という感じの話ではあるが意外にこれは世代間によって違いがあるのかも知れない。

私なぞはDJということは、たまにさせてもらうくらい、しかも相も変わらず自宅にはターンテーブル1個、という体たらくであるので、あくまで「音楽を聴く」ということの一種のヴァリエーションとして、DJというものは存在している感じである。でも世の中には、もしかしたらDJしたくてしたくてたまらなくて、だからこそそのための音楽を聴いて、という人だっているかも知れない。どちらが良い悪いの問題ではなくて、それはもしかしたら世代の問題なのかも知れない。何せ上記のように「失恋→DJ」なんてことが起こりうる世の中なのであるからして。

まあこれくらい色々なことがほんの数年でも目まぐるしく変わるわけだから、そういう、何と言うか音楽との付き合い方だって変わってくるのだろうなあ、これからも変わり続けるのだろうなあ、と非常にぼんやりと思ったところでThe Systemの「Don't Disturb This Groove」を聴く。アメリカン白人黒人デュオ、87年のアルバムである。タイトル曲が大ヒットしていたので、若き日のtd少年もラジオで耳にしたことがあって、そのしなやかな、そして優しい感じが印象に残っていたので、このアルバムを最近入手して聴いている。そうだ、そういえば当時坂本龍一も「好きでよく聴いている」とか言っていた記憶がある。何よりも、音の感触が暑苦しくなく、涼しげである。それなのにやはりソウルフル、というのがどことなく都会的な印象を受ける、って自分で書いてて恥ずかしくなってきたな。ビートは強靭なのに押し付けがましくなく、まずはソングライティングありき、な姿勢が良い。そして、当時最先端の音で作りこみすぎてて、今聴くと恥ずかしい、というのがこの手の音楽にはありがちな寂しい話であるが、このアルバムは全くそういうことがなく、いま聴いても普通に普遍的なエレクトリックなポップソウルアルバムに仕上がっているのである。この2人は色々プロデュースも手がけており、よくよく音作りをわかったうえで自分たちの音楽にフィードバックさせていたであろうことが良く窺える、そんな上品・上質な1枚。同時に83年くらいのデビュー作も入手して聴いているが、こちらも荒削りながらも(何か狂ったようなエレクトロナンバーとかあってびびったが)しっかりとした作りでバランスの良い作品であった。そういえばこの87年作はジャケの印象も合わせてなのか、何かで「ドライヴに欠かせません」とか書いてあったが、まあそうかも知れない。とくに異性とのドライヴには、って私はアナログで聴いているので関係ないのであるが。